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1-21 別れの予感 1

last update Huling Na-update: 2025-06-11 13:15:57

 朱莉と修也はカフェレストランで向かい合わせに座っていた。

「朱莉さん、大丈夫ですか? 折角のオムライスが冷めてしまいますよ?」

「え? あ! す、すいません」

修也に指摘され、朱莉は自分が出来立てのオムライスを前にぼ~っとしていたことに気付いて頬を染めた。

「ひょっとして先程の2人が気になるんですか?」

修也はオムライスを口に運びながら尋ねた。

「はい。すみません……」

「別に謝る必要は無いですよ? 朱莉さんは別に何も悪いことはしていないのですから」

「ですが……何だか責任を感じてしまって……」

朱莉は項垂れた。

「とりあえず元気を出して食べましょう。午後はお母さんの面会に行くんですよね? 僕もご一緒させて下さい」

「ですけど、やはり……各務さんに面会に来ていただくなんて申し訳ないです」

「いえ、いいんです。それにあながち朱莉さんのお母さんとは全く関わりが無かったわけじゃありませんから」

修也は何故か意味深な言い方をした。

「え? それはどういう意味ですか?」

朱莉は首を傾げて尋ねたが、修也は曖昧に笑うだけだった。その笑みが表す意味を朱莉は知る由も無かった――

****

 その頃――

 航は美由紀の住む賃貸マンションに来ていた。先程からインターホンを押しても何の

応答も無い。スマホに電話を入れても繋がらないし、メッセージを入れても既読にすらならない。

「美由紀……何所に行ったんだよ。何で連絡が取れないんだよ……」

航はため息をついて、ズルズルと美由紀の玄関の前に座り込み、ため息をついた。

するとその時、航のスマホに着信が入った。

「美由紀か!?」

慌ててスマホを上着のポケットから取り出すと相手は父親からであった。

「チッ! 何だよ。こんな時に……」

思わず舌打ちをすると航はスマホをタップした。

「はい、もしもし」

『航、今何所にいるんだ?』

「何所って……」

『もしかすると彼女の家か?』

「ああ、まあな」

『そうか。だが、夜には帰るんだろう?』

「あ、あたりまえじゃないかっ! 何言ってるんだよ!」

『そうか、ならいい。実は今夜23時に仕事が入ったんだ。張り込みの仕事だ。やれるな?』

「ああ、勿論大丈夫だ」

『そうか、詳細はお前が帰宅してから話す。それじゃ、邪魔したな』

「な……な、何おかしなこと言ってるんだよっ! 分かった、今から帰るから仕事の話を聞かせてもらう
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